突然ですが、みなさんに質問です。
「iPhoneの中に入っている部品を、どこの会社から買うか」
これ、日本の株式市場とどう関係があると思いますか?
実は2026年7月2日、この「部品の買い先を変えるかもしれない」というニュースが流れただけで、日経平均株価が一日で1300円以上も下がりました。
ニュースの中身はこうです。
「アップルが、中国のメモリーチップメーカーから部品を買うことを検討している」
「メモリーチップ」とは、スマートフォンやパソコンの中に入っている、データを記憶するための部品のことです。
たったこれだけのニュースで、なぜ日本の株がこんなに大きく動いたのでしょうか?今日はその「なんで?」を一緒に考えていきましょう!

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まず整理!今のiPhoneのメモリーは誰が作っているの?
iPhoneには2種類のメモリーが入っています。
①DRAM(ディーラム)
アプリを動かすときに使う、作業台のようなメモリーです。iPhoneのDRAMは主に3つの会社が作っています。
- サムスン電子(韓国)— 約60%のシェア
- SKハイニックス(韓国)
- マイクロン・テクノロジー(アメリカ)
②NAND(ナンド)型フラッシュメモリー
写真や動画、アプリを保存するストレージです。こちらは以下の会社から調達しています。
- サムスン電子(韓国)
- SKハイニックス(韓国)
- キオクシア(日本)
今回、アップルが中国メーカーから買おうとしているのは主に①のDRAMの話です。
なぜアップルは中国から買おうとしているの?
今のアップルは、大きな悩みを抱えています。
メモリーチップの値段が、ものすごく上がっているのです。
AI(人工知能)が世界中で普及したことで、データを大量に保存・処理するためのメモリーチップが急激に不足しています。不足すると当然、値段が上がります。
実際に数字を見てみると、iPhoneに搭載されているメモリーチップの1台あたりのコストが、39ドルから145ドルへと約4倍近くも跳ね上がったと報じられています。
コストが上がれば、アップルは利益が減ります。そこでアップルが考えたのが「もっと安い調達先を探そう」ということでした。
中国のCXMT(長鑫存儲技術)とYMTC(長江存儲科技)という2つの会社が、その候補として浮かんだのです。この2社は、政府の支援を受けて急速に成長した中国のメモリーメーカーで、既存の3社より安くチップを供給できる可能性があります。
なぜこのニュースで日本やアジアの株が下がったの?
ここが今日の核心です。
「アップルが中国のメーカーから買うかも」というニュースを聞いたとき、投資家はこう考えます。
これまでアップルにDRAMを売っていたサムスン・SKハイニックス・マイクロンは、その分だけ注文が減るかもしれない。つまり、これらの会社の売上が減るかもしれない。
さらに「アップルが中国メーカーと取引するなら、半導体業界全体の勢力図が変わるかもしれない」という不安が広がり、iPhoneのNANDフラッシュメモリー(データを保存する部品)を供給しているキオクシアや、他の半導体関連株にも、まとめて売りが広がりました。
これを「連想売り」といいます。直接関係があるかどうかに関わらず、「影響を受けそうな会社の株を、念のため売っておこう」という動きのことです。
実際にこの日、日本のキオクシアの株価は前日比13%安と大きく下落しました。東京エレクトロンやイビデンといった他の半導体関連株にも同じように売りが広がりました。韓国ではさらに激しく、株価の下落が大きすぎたため、「サーキットブレーカー」(相場が急変したときに一時的に取引を止める仕組み)が発動されるほどでした。
面白い逆転現象!アップル自身の株は上がった
ここで面白いことが起きています。
メモリーを「売る側」の会社(キオクシアやサムスンなど)の株が下がる一方で、メモリーを「買う側」のアップル自身の株は、この日4.59%も上昇しています。
なぜでしょうか?
理由はシンプルです。「安く買えるかもしれない→コストが下がる→利益が増えるかも」と投資家が判断したからです。
「メモリーを売る側にとっては悪いニュース、買う側にとっては良いニュース」
同じニュースが、立場によって全く反対の影響をもたらす。これが株式投資の面白いところです。
でも、話はそう簡単ではない
ここで大事な注意点があります。
今回のニュース、実はまだ「検討中」の段階です。アップルは実際に中国メーカーから買うと決めたわけではありません。
しかも、2つの中国企業はアメリカの国防総省から「中国軍と関係がある企業リスト」に載っています。アップルは実際に買えるかどうか、アメリカ政府の承認を求めている状態です。
さらに、アップルのティム・クックCEO自身が、トランプ政権の担当者に直接「問題ないか確認している」という報道も出ています。
つまり「ニュースが出た=実際に起きた」ではないのです。それでも市場は大きく反応した。これがまた、投資の難しさでもあります。

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「空売り」という別の要因も
実はもう一つ、この日の急落を後押しした要因があります。
著名な投資家マイケル・バーリ氏が、エヌビディアなどの半導体株を「空売り(からうり)」していることが明らかになりました。
空売りとは、「株価が下がる」と予想してお金を稼ぐ投資の方法です。今は持っていない株を借りて売っておき、後で値段が下がってから買い戻すことで利益を得ます。有名な投資家がこれをやっていると知ると、「あの人が下がると思っているなら、自分も売った方がいいかも」と感じる人が増え、さらに売りが広がりやすくなります。
投資家目線でのポイント整理
今回のニュースから、投資家として学べることを3つまとめます。
①「サプライチェーン」の変化は、連鎖的に広がる
サプライチェーンとは、部品が作られてから完成品になるまでの「流れ」のことです。アップルがDRAMの調達先を変えるかもしれないという話が、日本のキオクシアの株まで動かしました。世界の経済はこんなにつながっているのです。
②「まだ決まっていないニュース」でも、市場は大きく反応する
今回は「検討中」という段階の話が、1300円以上の株価下落を引き起こしました。市場は「現実に起きたこと」だけでなく、「これから起きるかもしれないこと」に対しても敏感に反応します。
③同じニュースで「得する側」と「損する側」が分かれる
メモリーを売る会社は株が下落、メモリーを買うアップルは株が上昇。同じニュースでも、立場によって全く違う影響が出ます。「どの立場の会社か」を考えることが、投資家として大切な視点です。
今日学んだ言葉のまとめ
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| メモリーチップ | スマートフォンやパソコンの中でデータを記憶する部品 |
| DRAM | 処理中のデータを一時的に保存するメモリーの種類 |
| NAND型フラッシュメモリー | 写真・動画・アプリなどを長期間保存するメモリーの種類 |
| 連想売り | 直接関係がなくても「影響を受けそう」と感じて株を売ること |
| サーキットブレーカー | 株価が急変したとき、一時的に取引を止める仕組み |
| 空売り | 株価が下がると予想して、先に株を売っておく投資手法 |
| サプライチェーン | 部品が作られてから完成品になるまでの流れ全体 |
ニュースで「iPhoneの部品がどこから来るか」という話が流れてきたとき、「それって日本の会社に関係あるのかな?」と考えてみる。その一歩が、投資家としての目線を育てます。
世界の出来事が、こんなにたくさんの会社とつながっている。それを実感できたのが、今回のニュースでした!
- 本記事における個別銘柄や投資に関する記載は、あくまで情報提供のみを目的としたものであり、特定の株式の売買や投資を推奨・勧誘するものではありません。また、将来の投資成果等を示唆・保証するものではありません。実際の投資にあたっての最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただきますようお願いいたします。
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