2026年8月10日(月曜日)、週明けの東京株式市場でこんなことが起きました。
日経平均株価が、前週末より1,363円も上がって66,970円で取引を終えました。
でも、この値上がりのきっかけは、実は3日前(8月7日・金曜日)にアメリカで発表された、たった1つの経済指標にありました。
「金曜日のアメリカのニュースが、なぜ週をまたいで月曜日の日本の株価を動かすの?」
今日はこの「なんで?」を一緒に考えながら、世界の株式市場が時差を超えてどうつながっているかを学んでいきましょう!

お問い合わせ・無料体験・個別相談は
事件のきっかけはアメリカの「雇用統計」
まず、すべての始まりになった出来事を確認しましょう。
8月7日(金曜日)、アメリカ政府が7月分の「雇用統計(こようとうけい)」を発表しました。
雇用統計とは、その名前の通り「その国で、どれくらいの人が新しく仕事に就いたか」などをまとめた、経済の健康状態を示す重要な指標のことです。
今回発表された数字は、市場の予想を大きく裏切るものでした。
- 市場の予想…
新しく8万3,000人が仕事に就くはず - 実際の結果…
2万3,000人が仕事を失った(前月比マイナス)
しかも、5月・6月分の数字も、あわせて10万3,000人分も下方修正(前に発表した数字を、実際はもっと悪かったと下方向に直すこと)されました。
「予想よりずっと悪い結果だった」
これを「ネガティブサプライズ」と言います。
なぜ「雇用の悪化」が「株高」につながるの?
ここで、少し不思議に思う人もいるかもしれません。
「雇用が悪化した」というのは、普通に考えれば「景気が悪くなっている」という、あまり良くないニュースのはずです。それなのに、なぜ株価が上がったのでしょうか?
答えは「金利」とのつながりにあります。
アメリカには、日本の日銀にあたるFRB(連邦準備理事会)という組織があります。景気が過熱してインフレ(物価上昇)が心配なときは金利を上げ、逆に景気が弱いときは金利を上げるのを控える、という判断をしています。
今回、雇用の数字が予想より大きく悪かったことで、投資家たちはこう考えました。
「景気が思ったより弱いなら、FRBは早いタイミングでの利上げを急がないのではないか」
一般的に「利上げ=株価にとってマイナス材料」「利上げが遠のく=株価にとってプラス材料」と受け止められることが多いです。
実際に、9月の会合で政策金利を据え置く(利上げをしない)確率は、雇用統計の発表前は4割程度でしたが、発表後には5割強まで上昇しました。「利上げが完全になくなった」わけではなく、あくまで「その可能性が高まった」という段階ですが、この期待の変化だけで、アメリカの株式市場では、特に金利の影響を受けやすいハイテク株を中心に買いが集まりました。
実は投資の世界には、今回のような現象を指す、ウォール街(アメリカの金融の中心地)の有名な言葉があります。
「Bad news is good news(悪いニュースは良いニュース)」
経済にとって悪いニュース(雇用の悪化)が出たことで、投資家にとっては「利上げが遠のく」という良いニュースに変わり、結果的に株が買われる。
株式市場が、単純に「景気の良し悪しをそのまま映す鏡」ではなく、「これから何が起きそうかという期待で動くゲーム」であることを表した、面白い言葉です。
為替にも、同時に大きな動きがあった
雇用統計の発表は、株だけでなく、為替(かわせ)にも大きな影響を与えました。
発表の直後、ドル・円は158円41銭から156円68銭まで、短時間で大きく円高方向に動きました。
理由は、カブサーの協調介入記事で学んだ「日米の金利差」の話とつながります。「アメリカの利上げが遠のく」という見方が広がると、日米の金利差が縮まる期待が生まれ、ドルを売って円を買う動きが強まりやすくなるのです。
金曜日の1日だけで、株・金利・為替という3つの市場が、雇用統計というたった1つの発表をきっかけに、大きく動いたことになります。
そして、週末をまたいで「月曜日の日本」へ
さて、ここからが今日の核心です。
日本の株式市場は、金曜日の夜(アメリカ市場が動いている時間)には、すでに閉まっています。そして、土曜日・日曜日は、そもそも市場自体がお休みです。
つまり、金曜日にアメリカで起きた「利上げ観測の後退」という大きなニュースに対して、日本の投資家たちが実際に売買で反応できるのは、週明けの月曜日が最初のタイミングになります。
「金曜日の夜にアメリカで起きたこと」への日本市場の答えが、まさに月曜日(8月10日)の1,363円高という形で現れました。
チャートにも変化が現れていた
今日の値動きには、テクニカル分析の面でも注目すべき変化がありました。
日経平均は、今日のチャート上で25日移動平均線を突破しました。これは「短期的なトレンドが、下向きから上向きに転換したサイン」と受け止められています。
ただし、ここで市場関係者から、こんな冷静な指摘も出ています。
「外部要因にほとんど動かされているため、自律的な強さで転換したとはいえない弱さがある」
つまり、「チャートの形だけを見れば上向きに変わったが、それは日本の会社自身の実力で上がったのではなく、アメリカの出来事に引っ張られて上がっただけだ」という、慎重な見方です。
カブサーで何度も学んできた通り、「なぜ上がったのか」という理由まで確認することが、投資家にとって欠かせない視点です。
「67,000円」という節目で、いったん一服
もう一つ、面白い動きがありました。
日経平均が67,000円の大台に近づいたところで、上昇の勢いがいったん止まりました。
「節目(ふしめ)」と呼ばれる、きりの良い数字(1,000円単位や10,000円単位など)に近づくと、「そろそろ利益を確定しておこう」と考える投資家が増え、上昇のペースが落ち着きやすくなる、という現象です。
さらに今日は、翌日(8月11日)が「山の日」で市場がお休みだったことに加え、お盆休みシーズンに入り始めたタイミングでもありました。市場に参加する人自体が少なくなる時期は、大きな方向感が出にくくなる傾向があります。
もう一つ、指数の上値を抑えた理由がありました。この日は国内の長期金利が上昇しており、お金を借りて不動産を運用する不動産会社にとっては、利払いの負担が増えることを意味します。そのため不動産銘柄が下落し、これも日経平均の上げ幅を抑える一因になりました。
なお、この日はTOPIX(東証株価指数)も5日連続で上昇し、過去最高値に迫る水準まで達しています。日経平均だけでなく、市場全体を広く映すTOPIXも同時に強かったことから、今回の株高が一部の値がさ株だけによるものではなく、比較的幅広い銘柄に支えられていたこともうかがえます。
今日学んだ言葉のまとめ
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 雇用統計 | その国でどれくらいの人が新しく仕事に就いたかなどをまとめた経済指標 |
| ネガティブサプライズ | 市場の予想より、大きく悪い結果が発表されること |
| FRB(連邦準備理事会) | アメリカの中央銀行にあたる組織。日本の日銀に相当する |
| 節目 | きりの良い数字。株価がそこに近づくと、いったん動きが止まりやすい |
| Bad news is good news | 悪いニュースが、期待の変化を通じて株高につながることを表すウォール街の格言 |
金曜日の夜、地球の反対側で起きた1つの経済指標の発表が、週末という「時間の壁」を越えて、月曜日の日本の株式市場を1,363円も動かしました。
世界の株式市場は、実は曜日をまたいでも、しっかりとつながっています。次の週末は、ぜひ「金曜日の夜に、アメリカで何か大きなニュースが出ていないか」をチェックしてみてください。月曜日の日本市場が、どう反応するかを予想する、面白い練習になりますよ!
- 本記事における個別銘柄や投資に関する記載は、あくまで情報提供のみを目的としたものであり、特定の株式の売買や投資を推奨・勧誘するものではありません。また、将来の投資成果等を示唆・保証するものではありません。実際の投資にあたっての最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただきますようお願いいたします。
お問い合わせ・体験レッスンのご案内
もし「子ども向けの金融教育を探している」「子どものうちから金融リテラシーを身につけさせたい」「世の中には色んな会社があることを学ばせたい」「投資の仕組みを知ってほしい」という方は、ぜひカブサーの無料体験レッスンをお申し込みください。株の仕組み、会社の仕組みを丁寧にわかりやすく解説します。

お問い合わせ・無料体験・個別相談は








