みなさんは、病気やけがで病院に行って、薬をもらったことがありますか?風邪をひいたときに飲む薬、お医者さんが出してくれる薬、ドラッグストアで買う薬。薬は、私たちの健康を守るために欠かせないものです。
こうした薬を研究して、つくって、届ける仕事をしている会社の集まりを、製薬業界(せいやくぎょうかい)と呼びます。
薬は、ふつうの商品とは少しちがう特徴がたくさんあります。今日は【業界研究編】第9回として、製薬業界の全体像を整理していきましょう。

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薬には、大きく2種類ある
薬は、買い方によって2種類に分けられます。
| 種類 | 特徴 | 買い方・もらい方 |
|---|---|---|
| 医療用医薬品 | お医者さんが診察して、必要な人に出す薬。効果が強いものも多い | 病院で処方せんをもらい、薬局で受け取る |
| 市販薬(OTC医薬品) | 薬局やドラッグストアで、自分で選んで買える薬 | ドラッグストアなど |
製薬会社の売上の中心になっているのは、医療用医薬品です。この回では、医療用医薬品を中心に見ていきます。
新薬ができるまで!とにかく時間とお金がかかる
製薬業界の一番大きな特徴は、新しい薬(新薬)をつくるのに、ものすごく時間とお金がかかることです。
- 研究
薬のもとになる物質を探す - 動物での試験
安全性や効果を確かめる - 治験(ちけん)
人で、安全性と効果を確かめる(3段階) - 承認
国が審査して、薬として認める - 発売
治験(ちけん)とは、新しい薬を、協力してくれる人に使ってもらって、本当に安全で効果があるかを確かめる試験のことです。
国の資料などでは、新薬が研究のスタートから承認されるまでに、9〜17年かかることがあるとされています。そして、薬の候補になった物質のうち、最後まで残って新薬になるのは、2万〜3万個に1つという、とても低い確率だといわれています(厚生労働省の資料にもとづく数字で、時期や薬によって変わります)。
つまり、製薬会社は、何年も、何百億円、ときには何千億円もかけて研究しても、最後に薬にならないことが多いのです。
大手の製薬会社4社をまとめて見ると、1年間の研究開発費は合計で約1.6兆円で、売上の約17%にあたると、格付けを行う会社の資料に書かれています。
日本の主な製薬会社
| 会社名 | 特徴 |
|---|---|
| 武田薬品工業 | 日本の製薬会社で最大級。世界各国で薬を販売している |
| アステラス製薬 | がんや泌尿器の分野などに強みをもつ |
| 第一三共 | がんの薬などの研究に力を入れている |
| エーザイ | 認知症やがんなどの分野に取り組む |
| 中外製薬 | 医療用医薬品に特化。スイスのロシュ社のグループ |
2026年3月期の売上収益は、武田薬品が約4.5兆円、アステラス製薬と第一三共がそれぞれ約2.1兆円、エーザイが約8,300億円でした(格付け会社の資料より)。
製薬会社の多くは、日本だけでなく、世界で薬を売っています。世界の医療用医薬品の市場では、アメリカが全体の約半分を占める最大の市場とされていて、日本の製薬会社の多くも、アメリカを大きな売り先としています。
製薬会社は、どうやって稼ぐの?
新薬を売る
新しい薬は、特許(とっきょ)で守られています。特許とは、新しい発明をした人や会社が、その発明を一定期間、独り占めして使える権利です。特許で守られている間は、ほかの会社が同じ薬を勝手につくって売ることはできません。
だから、製薬会社は、特許の期間中に新薬を売って、研究にかかったお金を回収し、利益を得ます。
特許が切れると、どうなる?
特許の期間が終わると、ほかの会社が、同じ成分の薬を安くつくって売ることができるようになります。これをジェネリック医薬品(後発医薬品)といいます。
新薬(特許の期間中)
1つの会社だけが売れる → 高い値段で売れる
特許が切れる
ジェネリック医薬品
いろいろな会社が売る → 安い値段になる
ジェネリック医薬品が出ると、もとの新薬の売上は、大きく減ることがあります。これをパテントクリフ(特許の崖)と呼びます。大きく売れている薬に頼っている会社ほど、特許が切れたときの影響は大きくなります。実際に、大手の製薬会社でも、一部の薬の特許切れの影響で売上が減った例があります。
だから、製薬会社は、特許が切れる前に、次の新薬を育てておく必要があるのです。
製薬業界の3つの特徴
特徴① 薬の値段(薬価)は、国が決める
病院でもらう薬の値段は、薬価(やっか)といって、国が決めたルールにもとづいて決まっています。お店が自由に値段を決められる、ふつうの商品とはちがいます。
薬価は、ほぼ毎年のように見直されて、基本的には下がる方向にあります。国としては、国民が使う医療費を抑えたいからです。そのため、製薬会社は、同じ薬を売っていても、売上が少しずつ減ってしまうことがあります。
特徴② 新薬が「当たるか」で、業績が大きく変わる
治験の結果次第で、何年もかけた研究が成功することも、失敗することもあります。大きな効果が確認された新薬が出れば、会社の将来が大きく変わります。反対に、期待されていた薬の治験がうまくいかなかったとき、会社の株価が大きく下がることもあります。
特徴③ 世界の政策や為替の影響を受けやすい
世界で薬を売っている会社が多いので、各国の薬の値段のルールや、為替(円とドルなどの交換レート)の影響を受けます。たとえば、アメリカで薬の値下げを求める動きが強まると、日本の製薬会社にとっても、利益に影響が出る可能性があります。
投資家目線で見ると、どんな意味があるの?
製薬会社の株を見るときは、次のようなポイントが注目されます。
- 新薬の開発状況(パイプライン)
どんな薬の候補が、どの段階まで進んでいるか。パイプラインとは、開発中の薬の候補のラインナップのこと - 治験の結果
発表があると、株価が大きく動くことがある - 特許が切れる時期
大きく売れている薬の特許が、いつ切れるか。次の柱になる薬は育っているか - 研究開発費の使い方
売上に対して、どれくらいの研究費をかけているか。お金をかけすぎていないか、足りなくなっていないか - 薬価や政策のニュース
国内外の薬の値段のルールが変わると、業績に影響が出る - 海外での売上と為替
海外売上が多い会社は、円安・円高の影響を受ける
製薬会社は、「いまの業績」だけでなく、5年後、10年後にどんな薬を売っているかを考えて見ることが大切な業界です。ひとつの治験の結果だけで一喜一憂せず、複数の薬の候補があるかどうかも見ておくと、会社の見え方が変わってきます。
今日学んだことを整理しよう
薬を研究して、つくって、届ける仕事
研究 → 動物での試験 → 治験(人での試験)→ 国の承認 → 発売
9〜17年かかることもあり、成功するのは2万〜3万個に1つといわれる
- 特許の期間中に新薬を売って、研究費を回収する
- 特許が切れると、ジェネリック医薬品が出て売上が減ることがある
- 薬の値段(薬価)は国が決める
- 新薬が当たるかで、業績が大きく変わる
- 世界の政策や為替の影響を受けやすい
パイプライン、治験の結果、特許が切れる時期に注目
今日学んだ言葉のまとめ
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 医療用医薬品 | お医者さんが診察して処方する薬 |
| 治験(ちけん) | 新しい薬が安全で効果があるかを、人で確かめる試験 |
| 特許(とっきょ) | 新しい発明を、一定期間、独り占めして使える権利 |
| ジェネリック医薬品 | 特許が切れた新薬と同じ成分でつくられる、価格の安い薬 |
| パテントクリフ | 特許が切れて、大きく売れていた薬の売上が急に減ること |
| 薬価(やっか) | 国が決めている、病院などで使う薬の公的な値段 |
| パイプライン | 製薬会社が開発中の、薬の候補のラインナップ |
薬は、私たちの健康を守る大切なものです。ふだん飲んでいる薬のパッケージを見ると、製薬会社の名前が書いてありますよね。
その薬が生まれるまでには、何年も何百億円もかけた研究と、たくさんの失敗がありました。次に薬を手に取ったときは、「この薬をつくった会社は、どんな研究をしているのかな?」と、ちょっと調べてみてください。
【業界研究編】シリーズ、次回もお楽しみに!
- 本記事における個別銘柄や投資に関する記載は、あくまで情報提供のみを目的としたものであり、特定の株式の売買や投資を推奨・勧誘するものではありません。また、将来の投資成果等を示唆・保証するものではありません。実際の投資にあたっての最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただきますようお願いいたします。
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