「松屋(まつや)」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか?
多くの人は、黄色い看板でおなじみの牛めしチェーン店を思い浮かべるかもしれません。
でも2026年8月、株式市場でこんなニュースがありました。
「松屋の株価が急騰。8月19日・20日に続き、24日には前日比+10.29%の2,702円まで上昇」
「え、牛めしの松屋がそんなに話題になってるの?」
そう思ったら、実は少し違います。
株式市場で「松屋」といえば、実は銀座に本店を構える、150年以上の歴史を持つ老舗百貨店のことを指しているのです。
今日はこの「同じ名前の、全く別の会社」という、投資初心者が実際に間違えやすいポイントを紹介しながら、株価急騰の理由も一緒に読み解いていきましょう!

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実は「松屋」という名前の会社は2つある
まず、この2つの会社をはっきり区別しましょう。
① 松屋(証券コード:8237)
1869年に「鶴屋呉服店」として創業した、日本を代表する老舗百貨店です。東京・銀座に本店、浅草にも店舗を構えています。ラグジュアリーブランドや伝統工芸品を扱う、格式のある百貨店です。
② 松屋フーズホールディングス(証券コード:9887)
みなさんがよく知っている、あの牛めしチェーン「松屋」を運営する会社です。
株式市場で単に「松屋」と呼ぶ場合、多くは①の百貨店の方を指します。証券コードも会社名も違う、まったくの別会社なのです。
今回、株価が2日連続で急騰したのは、①の百貨店の方でした。
なぜ「同じ名前の会社」が存在するの?
「なんでこんなに紛らわしいの?」と思うかもしれません。理由はシンプルで、会社名や店舗名は、それぞれの会社が独自に、自由に決めているからです。
法律上、まったく同じ名前の会社を作ることは制限されていますが、「松屋」のように、業種も規模も全く違う会社であれば、似た名前・同じ名前がついてしまうことがあります。
投資の世界では、この「名前の似た会社」「同じ会社名だけど別の意味」という混同が、実はよく起こります。証券コード(数字の番号)を必ず確認することが、間違いを防ぐ一番確実な方法です。
なぜ百貨店の松屋の株価が急騰したのか
さて、今回株価が急騰した本題の百貨店・松屋を見ていきましょう。
2026年7月14日に発表された決算はこうでした。
- 売上高
120億9,500万円(前年同期比5.9%増) - 営業利益
6億6,100万円(前年同期比35.9%増) - 純利益
3億7,500万円(前年同期比56.0%増)
売上高の伸び以上に、利益の伸びが大きい。つまり「稼ぐ力」がしっかり改善していることがうかがえる決算でした。
面白いことに、この決算が発表された直後(7月15日)は、「純利益56%増も材料出尽くし」として、株価はむしろ急反落する場面もありました。良い決算が出ても、その内容がすでに投資家の期待に織り込まれていた場合、「出尽くし」として売られることがある、という一つの例です。
好調の理由として挙げられているのが、「富裕層需要」と「訪日観光客の消費」です。特に銀座本店の業績向上が、決算全体を押し上げました。
円安等を背景に、銀座店の免税売上高(外国人観光客向けの、税金がかからない売上)は過去最高を更新しています。訪日外国人観光客の消費額は年々拡大しており、幅広い国々からの買い上げが、店舗全体の売上を強く牽引しています。
実は、松屋(百貨店)の株価が8月19日以降に急騰し始めた直接のきっかけの一つとして、8月19日に日本政府観光局(JNTO)が「2026年7月の訪日外国人客数」を発表したことが挙げられます。7月の訪日外客数は344万2,100人で、7月としては過去最高を記録しました(全体では前年同月比0.1%増とほぼ横ばいでしたが、韓国・台湾など17市場では7月として過去最高を更新しています)。株価はその後も8月24日にかけて上昇基調が続いています。
このように、インバウンドに関連した業績の良い会社は、国全体の「訪日客数」に関するニュースが出るたびに、投資家から連想的に買われやすくなる、という傾向があります。
「インバウンド消費」が、百貨店の追い風になっている
ここで大切な言葉を確認しましょう。
インバウンドとは、海外から日本に訪れる観光客のことです。「インバウンド消費」というと、そういった訪日観光客が日本国内で行う買い物や飲食などの消費のことを指します。
円安が続いていることで、外国人観光客にとって日本での買い物が「割安」に感じられやすくなっています。特に銀座のような、ラグジュアリーブランドが集まるエリアは、訪日観光客からの人気が高く、免税での高額な買い物も多く行われます。
このインバウンド消費の勢いが、松屋(百貨店)の業績を押し上げている、というのが今回の急騰の背景です。
株価が急騰しても、割高感には要注意
ここで、投資家として大切な視点を紹介します。
株価が急騰した後の松屋(百貨店)は、PER(株価収益率)が274倍を超えるという、かなり高い水準になっていると分析されています(8月24日時点)。
PERとは、株価が、その会社の1株あたりの利益の何倍になっているかを示す数字です。この数字が高いほど、「今の利益に対して、株価が高く評価されている」ことを意味します。
一般的な会社のPERが十数倍〜二十数倍程度であることを考えると、274倍という数字は、かなり高い水準です。これは、「今の利益水準」よりも、「これから訪日観光客の消費がさらに伸びるはずだ」という、将来への期待が大きく株価に織り込まれている状態だと考えられます。
PBR(株価純資産倍率、株価が会社の資産に対して何倍になっているかを示す数字)も5.25倍(8月24日時点)となっており、他の百貨店と比べても高めの評価がついています。
「業績が伸びている」というポジティブなニュースと同時に、「すでに期待が大きく織り込まれた株価になっている」という事実も、あわせて確認しておくことが大切です。
投資家として、今回の話から学べること
今回の「松屋」急騰のニュースから、投資家として大切なポイントを整理しましょう。
① 会社名だけでなく、証券コードを必ず確認する
同じ、あるいは似た名前の会社が複数存在することがあります。ニュースを見たときは、「どの会社の話か」を証券コードで確認する習慣をつけることが、勘違いを防ぐ一番の方法です。
②「なぜ上がっているのか」の背景を確認する
今回であれば「富裕層需要」「訪日観光客の消費増加」という、具体的な理由がありました。急騰のニュースを見たら、その裏にある理由まで確認することが大切です。
③ 株価が急騰した後は、割高になっていないかも確認する
良いニュースがあったからといって、その株価が「今買うのにちょうど良い水準か」は、また別の話です。PERやPBRといった指標を確認することで、「期待がどれくらい株価に織り込まれているか」を推し量ることができます。
今日学んだ言葉のまとめ
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| 証券コード | 上場している会社それぞれに割り振られた、識別のための番号 |
| インバウンド | 海外から日本を訪れる観光客のこと |
| 免税売上高 | 外国人観光客向けの、税金がかからない条件で売れた金額 |
| PER(株価収益率) | 株価が、1株あたりの利益の何倍かを示す指標。高いほど株価に期待が織り込まれている |
| PBR(株価純資産倍率) | 株価が、1株あたりの資産の何倍かを示す指標 |
「松屋」という一つの名前から、実は全く違う2つの会社があることが分かりました。ニュースで会社名を見たとき、「本当にその会社で合っているかな?」と、一度立ち止まって確認する習慣を、ぜひ身につけてみてください。
小さな勘違いが、大きな誤解につながることもあります。正確な情報を、正確に読み取る力こそが、投資家としての第一歩です!
- 本記事における個別銘柄や投資に関する記載は、あくまで情報提供のみを目的としたものであり、特定の株式の売買や投資を推奨・勧誘するものではありません。また、将来の投資成果等を示唆・保証するものではありません。実際の投資にあたっての最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただきますようお願いいたします。
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